第二十章:縮地千里風沙迷行1




 しかし謝憐は言った。

「たしかに君が聞いたのは民間の伝承だろうけど、でも、半月国は実在しているよ」

「へえ?」三郎が声を上げた。

 そのとき、南風はようやく地面に幾重にも重なった陣法を描き終えた。彼は身を起こして言った。「できました。いつ出発しますか?」

 謝憐は手早く風呂敷包みを片づけて、扉の前に立った。「今から行こう」

 扉の上に手を置く。「天官賜福、百无禁忌!」そして軽く押した。

 扉を開けると、そこには小山の斜面や村が見えず、代わりにがらんとした大通りがあった。

 この大通りは道は広いものの、人はまばらで、しばらくしてやっと一人二人と通行人を見かけた。日が落ちてきたからというわけではなく、西北の地はもともと人口が少なく砂漠に近いので、昼間でも出歩いている人が多くないのだ。謝憐は部屋から出てくると、後手で扉を閉めた。振り返ってみると、いったい彼は菩提寺のどこから出てきたのだろうか? 背後にあるのは小さな宿屋でしかなかった。おそらく一歩で千里の距離を越えたのだろう。これぞ縮地術の妙である。

 何人かの通行人が通りがかるなり、ちらちらと彼らを見て非常に警戒した様子を見せる。すると三郎が背後で言った。「古書によれば、月が沈んでから北極星の方に向かってまっすぐ行くと、半月国が見えるらしい。兄さん、見て」それから天を指す。「北斗星だ」

 謝憐は空を見上げて笑った。「北斗星か、とっても明るいね」

 三郎は彼のそばにやって来て肩を並べると、彼の目をちらっと見て、顔を上げて笑った。「そうだね。西北の夜空はどうしてか中原よりも広々としてる」

 謝憐は同意した。彼らが真面目な顔で夜空と星の話をしている一方で、後ろの二人の小神官はこの状況の異常さに突っ込まずにはいられないようだ。南風が言った。「どうして彼も着いてきてるんですか!?」

 三郎は無垢な顔をした。「ああ、この奇門遁甲はなんとも不思議だと思ったので、ついでに見物に来てみました」

 南風は腹を立てた。「見物? 俺たちが遊びに行くとでも思っているのか!?」

 謝憐は眉間を揉んだ。「まあ、着いてきちゃったものは仕方ない。彼は君たちの食べ物を奪ったりしないし、私が持っているので間に合わせるから。三郎、私に着いてきてね。勝手に居なくならないこと」

 三郎はお利口そうに「はい」と言った。

「これって食糧の問題ですか!?」

「はいはい、南風、夜も更けたことだし、仕事しよ仕事。そんなに気にすることでもないでしょ。行こ行こ」

 ……

 四人は北斗星に導かれ、北に向かってまっすぐ行った。一晩歩いてみると、道中で見かける町や緑は少なくなってきて、路面の砂石がだんだんと増え、足元が土ではなくなったときには、もう砂漠に入っていた。縮地術では一歩で千里を渡ることが出来るが、越える距離が遠くなればなるほど、消費される法力も大きくなり、南風はこの一回で、少なくとも数刻は再使用ができない。南風が一定の法力を消耗しているため、戦力温存を考えると、謝憐は扶揺にもう一回を頼むことができない。念のため個人の法力を充填しておくべきだった。

 荒涼とした砂漠の地は昼夜の温度差が激しく、夜は寒さが骨身に染み、昼間になると全く別の様子になる。ここの空は極めて清らかで空は高く雲はまばらだったが、日光は猛烈だった。歩けば歩くほど巨大な蒸し器の中に入っているような、地核から湯気が立ち上っているような暑さで、一日歩けば生きている人間を蒸し焼きにできそうだった。

 謝憐は風向きと岩の足元に縮こまった植生弁の方向を頼りにしていたが、誰かがついていけていないのではないかと心配して、しばらく歩くと振り返った。南風と扶揺は只人ではないので杞憂にすぎなかったが、しかし三郎を見ると彼は思わず笑ってしまった。

 炎天下に晒されたその少年は、脱いだ紅衣の上着でだらだらと日差しを遮っている。ぐたっとした表情には嫌気も滲んでいた。彼の肌は白皙で、髪は漆黒だ。紅衣でこんな風に顔を覆い隠していると、彼の眉目秀麗さはいっそう引き立った。謝憐は竹笠を外すと彼の頭に被せ、留め具をつけてやった。

「貸してあげる」

 三郎は呆気にとられると、一拍遅れて「大丈夫」と笑い、笠を返した。謝憐もしつこくするつもりはなかったので、いらないのなら無理強いはすまいと思って言った。「また必要になったら言ってね」竹笠を持つと、また歩き出した。

 しばらくして、一行は前方の黄砂の中に灰色の小楼を見つけた、近づいてみると、それは長年放棄されていた宿屋のようだった。謝憐は空を仰いだ。すでに正午を過ぎてそろそろ未の刻、おそらく一日の中で最も暑くてたまらない時間だった。彼らはすでに一晩歩いていた。休憩の時間だろう。残りの三人を連れて入ると、建物の中で四角い卓子を見つけ、囲んで腰を下ろした。謝憐は、背中の簡易袋から水壺を取り出して、三郎に渡した。

「いる?」

 三郎はうなずいて受け取ると、一口飲んだ。謝憐も水壺を返されるとすぐに呷った。上を向いて水を飲み込むと、喉が上下に波打ち、中に冷たいものが押し寄せて、とてもすっきりした。そばにいる三郎は片手で頬杖をつくと、それをじっと見つめて、不意に「まだある?」と言った。

 謝憐が唇の端についた水を拭うと、かすかにしっとりした。うなずいて、再び水壺を差し出す。三郎が受け取ろうとし、片手に水壺を持った謝憐の手が開いた。

 「待て」

 一同が扶揺を見ると、彼はゆっくりと袖の中からもう一つの水壺を取り出し、卓子の上に置いて、押し出した。

「私のもある。どうぞ」

 謝憐はすぐに何が起ころうとしているのか理解した。

 扶揺のあの性格で、どうして自ら他人と同じ水壺を分かち合おうとするだろう? 昨夜、もう一度試すと言っていたことを思い出した。この水壺に入っているのは、普通の水ではなく、現形水に違いない。

 この秘薬の水は、普通の人が飲む分には何も起こらないが、人でないものが飲めば、水薬の作用でその者の本性が現れる。彼らがこの少年が“絶”かどうかを試すのであれば、この壺の現形水は高い威力を発揮するだろう。

 扶揺の言葉を聞いて三郎は笑った。「俺と兄さんだったらこれ一本で充分じゃないかな」

 南風も扶揺もそばの謝憐を見た。私を見てどうするの? 謝憐と思った。「その水はもう無くなりそうなので。遠慮することないですよ」扶揺の声は冷たかった。

「そうですか? ではお二人が先にどうぞ」

「……」

 二人とも何も言わなかった。しばらくして、扶揺はまた言った。「あなたは客人ですし、どうぞ」

 彼の話し方も表情もまだ上品だったが、しかし謝憐にはその言葉が食いしばった歯の隙間から絞り出されたような気がしていた。三郎も、『どうぞ』の手つきをして言った。「あなた方は付添いですし、先にどうぞ。でないと申し訳ない」

 謝憐は彼らが心にもない態度をとっているのを聞いて、ついに手を出そうとしたが、三人が一つの卓子の上で、同時に憐れな水壺におもむろに力を入れて押したり引いたりしていれば、自分の手の下でかすかに震えているぼろぼろの卓子は、瞬く間にその天寿を全うしてしまうだろうと思って、首を横に振った。水壺をさり気なく何度か往復させ、ついに我慢できなくなった扶揺は冷笑した。「水を飲みたくないようですねえ、なにか後ろめたいことがあるのでは?」

 三郎は笑った。「あなたがたはどうも俺に友好的ではないし、先に飲もうとしないし、そっちこそ後ろめたいことがあるんじゃないですか。水に毒が入っているとか?」

 「隣のお方に聞いてみたらどうですか、この水に毒があるかどうかを」

 三郎は謝憐にたずねた。「兄さん、この水に毒はある?」

 扶揺の提案は本当にずるい。現形水はもちろん毒薬ではなく、普通の人が飲めばただの水を飲むのと何ら変わりはない。謝憐はこう答えるしかなかった。「毒はないよ。でも……」

 言い終わらないうちに、南風と扶揺が睨みつけてくる。だが三郎はすぐに追及の手を緩めた。「そう」

 彼はその水壺を持って掲げると、手の中で揺らした。「貴方が毒はないと言うなら、飲むよ」

 言うなり笑って、一気に飲み干した。

 謝憐はこんなに呆気なく彼が飲むとは思ってもいなかったので、少々唖然とした。南風と扶揺も呆然としたが、すぐに警戒する顔になった。だが、三郎はその現形水を飲み干し壺を揺らすと、「味が良くないな」と言って、ついでに壺を捨ててしまった。ガシャンと音がして、その水壺は地面に落ちて粉々になった。

 彼が現形水を飲んでも何の異常も見られず、扶揺の顔に一瞬吃驚が走った。ちょっと間をおいて、彼は淡々と言う。「普通の水です。同じ味に決まってるでしょう。どんな違いがあるって言うんですか」

 三郎は謝憐の肘のあたりに置いてあった水壺を持った。「もちろん違います。こっちのほうが美味しい」

 謝憐は笑いを堪えられない。本気で結果がどうでも良くなったし、身分を装っている理由も特に気にならないので、この乱闘は彼にしてみると、面白いということ以外に意味がない。もう決着がついただろうと思ったのだが、ゴトンと音がしたかと思うと、南風が卓子の上に剣を置いていた。

 彼の勢いはその場で人を殺しかねないほどだった。謝憐はしばらく無言になると、「何をするんだ?」と言った。

 南風は声を沈めて言った。「これから向かうところは危険です。護身用の剣をお渡ししておきましょう」

 謝憐が頭を下げて見てみると、この剣の鞘は古風で、長い歳月によって磨かれているのか凡品ではなかった。心臓が震え、彼は額をおさえると横を向いた。紅鏡だ、と内心で呟く。

 この剣の名前は、まさに『紅鏡』だった。宝剣である。これは魔を伏せ妖を降ろすことはできないが、どんな妖魔鬼怪もその法鏡から逃れられない。人ではないものがそれを引き抜くと、その刃は徐々に紅く染まって、血で満たされたようになり、血紅の刃には抜刀した者の正体が映ってしまう。相手が凶であろうと絶であろうと逃れられない!

 少年たちは宝剣宝馬には目がないものだ。三郎は「へえ?」と声を上げると、興味をそそられたのか「見てみよう」と言った。

 片手で刀身、片手で柄を握ると、ゆっくりと外へ引き抜いた。南風と扶揺が四つの目でひたりと彼の動きを見つめていた。その剣が鞘から三寸出ると、切っ先が真っ白に輝いた。しばらくして三郎は軽く笑った。

「兄さん、貴方の家来さ、俺のことをからかってない?」

 謝憐は軽く咳払いをすると、横を向いて言った。「三郎ってば、言ったでしょう。家来じゃないって」そう言って彼はまた姿勢を戻した。南風は冷たい声を出した。「誰がからかっていると?」

 三郎は笑った。「剣が折れているのに、どうやって身を守れと?」

 彼はそう言ってその剣を鞘に戻し、卓子の上に放り投げた。それを聞いて南風は眉を寄せると、いそいで柄を握って引き抜いてみたが、カシャンという音だけが響いた。彼の手に数多の鋭いものが落ちた……剣が断たれている。

 紅鏡の刃は、なんと三寸以下から折れてしまっていた!

 南風は顔色を変えて、鞘をひっくり返すと、ガチャガチャと乱れた音がしただけで、鞘の中に残った刃は、全て断たれて数えるほどの白く輝く鋭い破片になっていた。

 紅鏡がすべての妖魔鬼怪を見分けることができるのは嘘ではなかったが、何かがその法眼から逃れられたことも、鞘越しに刃を数本に切断したことも聞いたことがない!

 南風も扶揺は、三郎を指さした。「お前……」

 三郎はハハと笑って後ろに寄りかかると、黒靴を卓子の上に乗せて、紅鏡の破片を手で投げて遊んでいた。

「どうやらあなた方がわざと、護身用にと折れた剣を渡したわけではないようだ。知らぬ間にうっかり折れてしまったのかも? お気遣いは無用です。俺は剣がなくても自分の身を守れる。剣はご自身で持っていたら良い」

 謝憐はその剣を全く直視できなかった。というのもこの奇剣『紅鏡』は、もともと君吾の所蔵品だったのだ。謝憐が初めて飞升したとき神武殿に遊びに行ったことがあり、彼のところで見せてもらったところ、あまり実用的ではないが面白いと思った。すると君吾は彼に下賜してくれた。その後天庭から貶され長い間困窮の日々が続くと、どうにも生活が立ち行かなくなってしまい、ついに彼は風信にこの奇剣を質に入れさせてしまった。

 そう、売ってしまったのだ!

 質に入れた後に引き換えたお金は主従二人で何度かいいものを食べるのに使い、それでなくなってしまった。あの頃に質に入れてしまったものはたくさんあり、時々思い出しては心で血を流すのはたまったものではなく、謝憐はさっぱり全て忘れることにしていた。おそらく風信が飞升した後このことを思い出して、一代の奇剣紅鏡が世俗に流されていることに耐えきれず、再び人界へ剣を回収しに行き、磨いて、研ぎ澄まさせて、南陽殿で保管し、また南風の手元に置いたのだろう。とにかく、謝憐はこの剣先を見ると頭に鈍い痛みを感じ、目をそらすしかなかった。彼はその三人がまたお互いにちょっかいを出しはじめたのを感じて、頭を振ると、外の天気を真剣に観察して考えた。この勢いだと、風砂が起こりそうだ。今日はこれ以上移動してしまうと、途中で風よけの場所を見つけられないかもしれない。

 そのとき、外の輝く金色の砂の上で、二つの人影がさっと通り過ぎていった。

 謝憐はすぐさま立ち上がった。

 その二つの人影は、ひとつは黒でひとつは白で、それほど急いでいないのか余裕が見受けられたが、足取りは風雲を踏むようで極めて速かった。黒衣の人物は細身で、白衣の人物は女道士で、長剣を背負い、手で埃を払っていた。黒衣のほうは振り向かなかったが、白衣の女道士はこの小さな建物とすれ違ったときに横を向いて笑んだ。その笑顔は彼らの姿のように、さっと消え去ったが、なぜか奇異な感じがした。

 謝憐は外を見つめてその瞬間をちょうど捉えていたが、小楼内の残りの三人は彼らの背中だけが見えたのかもしれない。つまらぬ些事は放っておかれ、南風は急に立ち上がった。「あれはなんだ?」

 謝憐も立ち上がった。「わからない。でも間違いなく一般人じゃない」しばらく沈吟して、彼は言った。「遊ぶのはこの辺にしよう。風が強いけど先を急ぐ。行けるところまで行こう」

 幸い、この一行は時々ちょっかいを出しあって喧嘩になってしまうが、仕事になれば心を鉄にして集中することができる。息抜きを終えて、紅鏡の破片を片付けると小楼を出た。四人は風を受けながらもしばらく歩いたが、再び二刻ほど歩いても、進んだ距離は前の二刻には遥かに及ばなかった。風砂は前よりもずっと激しかった。狂ったような風は砂を孕み、真っ向から人に顔に吹き付けてきて、露出した顔や腕に鈍い痛みを与えた。歩けば歩くほど、苦しくなって、耳元でぎゅうぎゅうと風鳴りがして、黄砂が地面を覆い、周りがはっきり見えなかった。謝憐は竹笠を押さえて「この風砂はおかしい!」と言った。

 しばらく誰も返事をしなかったので、はぐれたのではないか謝憐は思ったが、振り返ってみると、三人ともまだよく着いてきてくれていた。だが、彼がさっき話したことは聞こえなかったようだった。風砂が猛々しいせいで、声まで吹き飛ばされてしまうのだ。南風と扶揺はもちろん心配する必要はなく、乱風狂砂に襲われても落ち着いていて、殺気がみなぎっていた。三郎はずっと彼の五歩うしろにいて、焦らずゆっくりと歩いていた。

 空一面の黄砂の中、その少年の表情には波ひとつ立たず、後手を組んで、紅衣と黒髪が風で乱れ翻っても、風砂の侵入を感じないかのように全く動じず、瞬きもしない。謝憐は散々砂に打たれて顔が痛くなっていたが、彼がこんなに無感動なのを見ると、本当に心配になってしまって、「砂が目と服に入らないよう気をつけて」と言った。しかしちょっと考えてみると、彼に声が届いていない気がしたので、謝憐はそのまま近づき、三郎の服の襟をしまって、風や砂が入らないようにした。三郎はぽかんとしていた。そのとき他の二人もやって来て、四人の距離が近づくとようやくお互いの声が聞こえてきた。「気をつけてね。この風砂は唐突だし変だ。妖風邪気かもしれない」と謝憐と言った。

 扶揺は言った。「風と砂が少し強いだけです。それ以外になにかありますか?」

 謝憐は首を横に振った。「風砂はいいんだ。砂の中に別のものが混じっているかもしれない」

 そのとき、突然の狂風が、謝憐のかぶっていた竹笠を吹き飛ばした。その竹笠は飛ぶと茫々とした黄砂の中にすっかり消えてしまいそうになったが、三郎は非常にすばやく反応して、手を伸ばして飛んで行こうとしていた笠を掴み、彼に渡した。謝憐は礼を言って、笠を結びながら、「どこかに避難したほうが良いね」と言った。

 扶揺は賛成しなかった。「この風砂の中に本当に鬼がいるとしたら、私たちの進行を妨害しているのでしょう。ならばむしろ進むべきです」

 謝憐が口を開く前に、三郎が先にハハと笑った。扶揺は顔を向けると冷たい声で言った。「何を笑っている?」

 三郎は腕を組むとにこにこ微笑んだ。

「あえて人と反対の行動を選ぶことで、自分が独立独歩できているような満足感を得ようとしてませんか?」

 謝憐は以前から、この少年はいつも笑っているが、本心かどうか分からないときがあり、お世辞や皮肉を言っているときもあるなあと感じていた。しかし今回は誰の目にも明らかなほど、彼の笑顔には好意がちっとも見えない。扶揺の顔つきはますます冷ややかになり、謝憐は手を挙げて言った。

「やめて。話は後でしよう。風が本格的に強くなってきたらまずい」

「人が飛ばされるとでも?」と扶揺。

「うん、その可能性もあるんだけど……」

 言い終わらないうちに、彼の前にいた数人が突然姿を消した。

 いや、消えたのは彼らではなく、謝憐のほうだった。――この風砂は本当に彼を包み、空に巻き上げてしまった。

 竜巻だ!

 謝憐は空中をぐるぐる回りながら手を振った。

「若邪! しっかりしていて頼りになるものに掴まって!」

 若邪がぴゅうぴゅうと飛んでいくと、すぐに白綾の端が沈み、何かにからみついているような感触した。謝憐はようやく空中で安定して、ほっと息をつくと、突然狂風に地面から十丈ほど離れたところへ連れて行かれた。

 彼は凧のように一本に引っ張られ、地上から繋げられていた。顔を殴ってくる黄砂の中で、彼は若邪に掴まりながら、努力して若邪が何を捕まえたのかを見ようとした。見ているうちに、彼はついに紅い影をとらえた。若邪の先端が紅衣の少年の手首に巻きついているようだった。

 しっかりしていて頼りになるものに掴まれと命じたが、まさか三郎を掴むとは!


***


二刻……四時間ほど


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コメント

はじめまして。

はじめまして。
魔道祖師からはまり、いくつか有志の方の翻訳を拝見し、こちらが一番質がよいように思い、一気に読ませていただきました。所々泣いちゃいました。ありがとうございます。私も中国語は勉強中ですがここまで訳せるのがうらやましいです。
できればぜひ続きを翻訳していただきたいです。いずれ日本語版は上陸するのでしょうが、私のようなファンは待ちきれず、書籍版との差異よりも早く読みたいという思いが強いのと、絶対に日本語版は買うので、差異はむしろ楽しみの一つという感覚です。魔道祖師のメディアミックスにふりまわされたせいでその辺はまったく気にしない素地ができあがっています(笑)
購入記録は全巻分で良いと思います、ほかの有志の方もそのやり方ですし、そちら様に負担がないことが大事です。

当然kirihataさんがこのような自力の翻訳公開体験を楽しめることが大前提です、もしそのおこぼれに預かれたなら、私は幸いです。



Re: はじめまして。

ポムの樹さん

 はじめまして~!魔道祖師から入られたんですね、天官にも興味持っていただいて、かつこちらの翻訳を読んでいただきありがとうございます。本当に辞書とか翻訳機頼りなので文化的な部分とか慣用句とか誤字脱字とかはダメダメなんですが、こういうことが書いてあるのかな?と参考にする形で、お役に立たているのならうれしいです。お褒めいただくと嬉しいのですが、そもそも墨香銅臭先生がまず素晴らしいのであって私は勝手に訳しているだけでしかないので、こう、思い上がってないか不安になりますね。そこらへんの線引きはずっと気をつけたいです。

 それから、課金部分の翻訳についてご意見ありがとうございます。そうですね、明確なお返事は出来ませんが、準備中ではあります。私生活が忙しくなったのでゆっくりやっています。できれば実現してからお返事したいなと思ったんですが、おまたせするのもアレなので今コメントをお返しさせてもらいました。
 ご意見ほんとうに参考になりました。たぶんいくつかご提案を採用させていただくことになると思いますが、選んだのは私なので、何か問題が起きてもお気に病まないでくださいね。
 わりとちょろい人間なので、メッセージ頂いたのでやろっかなって準備始めちゃいました。でもド素人の訳だし、天官賜福ものすごく面白いので、どんどん魔翻訳とかでもいいので読まれることをおすすめします。でも純粋に、労力費やしたものを読んでいただけるのはとってもうれしいです。

 改めて、メッセージありがとうございました。準備がんばりますね!

ありがとうございます!

kirihataさん
お返事遅くなってしまってすみません!
やったぁぁぁ(*´◒`*)!!
翻訳続行、ありがとうございます!!
あれから晋江文学城で原作をすべて購入し、自分で翻訳しようとしたのですが、やはりkirihataさんの訳が恋しく…続行していただけてとってもとっても嬉しいです!
色々な都合の中でやっていただくわけですから、たとえ途中となってしまうことがあっても大丈夫です、すでにこの訳文と出逢えたことは私の中で大切な思い出ですから(๑>◡<๑)


課金部分を読むにあたっての手続き、把握しました!のちほどさせていただきますね!

中華BL作品が日本語吹きかえや字幕になって続々リリースになり、わくわくですね。天官賜福もアニメがいよいよ週末に、ドラマは撮影がスタートしましたね。
kirihataさんと一緒に中華イヤーを楽しむことができて本当に嬉しいです!!
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プロフィール

kirihata

Author:kirihata
中国語初心者です。原作の読み返しついでに自分なりに訳してます。
魔翻訳に毛が生えた程度なのでご了承ください。

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